大声というよりもほとんど怒号に近い愛の告白から一週間が経った。

 ビッテンフェルトは近隣の惑星へ視察へ出掛け、ロイエンタールは元帥府で会議とデスクワークに追われており、一部の目撃者や、目撃者の一人から一部始終を脚色付きで聞いた提督たちにしてみれば、つまらないことこの上ない日々であった。
 猪がおらぬなら、その愛しい相手でも構わないから真実とそれに付随する面白い話を聞かせろ、とロイエンタールを飲みに誘う者も数名いたが、忙しいだとか先約があるとかで断られ、その目的を果たすことに成功した者はいない。

 実際、この一週間のロイエンタールは多忙であった。
 いくら決済をしても終わらない書類に加えて、話し合えば話し合うほど平行線で意見のまとまらない会議のせいで、実際の仕事量を上回る疲労感を感じていた。
 目の前のより大きなストレスに対応せざるを得ない時、人はその前にあったストレスを抑圧して心の奥底に押し込める。
 この時のロイエンタールもその状況にあった。


 週の半ばを過ぎた頃、ミッターマイヤーの誘いに乗り、飲みに出掛けたロイエンタールは、ミッターマイヤーからそのものずばり愛の告白事件について質問責めに合ってしまった。

 「卿はビッテンフェルトに何か恨みでも買うようなことをしたのか?
 いやいや、卿のことだからビッテンフェルトの好いた女性を、それと知らずに寝取ったとか、そういうことだろう?
 アレは新手の嫌がらせではないのか?
 ビッテンフェルトが考えたにしては良く出来た嫌がらせだが…クレーブナー辺りが知恵を貸したかな?
 卿のその疲れた顔から嫌がらせの効果がわかるな。
 なかなかどうして、黒色槍騎兵艦隊にも知恵者がいるようじゃないか。
 なあ、ロイエンタール?」

 ミッターマイヤーはその二つ名の通り疾風のごとき勢いでロイエンタールに尋ねた。
 当然ながらこの間はノンブレスである。
 ロイエンタールは疾風ウォルフの先制攻撃に撃沈寸前であった。
 先日の喧嘩の件を水に流して、今日はミッターマイヤーとまったり飲むぞ!という気分は疾風の前に呆気なく霧散した。

 ミッターマイヤーにしてみれば、ビッテンフェルトのこの嫌がらせは面白くて仕方がない。
 男が男に愛を告白するという行為だけではこれほどの面白みは出ないだろう
 公衆の面前で、大声で告白し、しかもその相手がロイエンタールなのである。
 2人っきりで、もしくは密室での同性間の愛の告白など何の面白味もない。
 それでは男だらけの軍隊における「本当にあった怖い話」でしかない。
 某A下士官曰く、「B少尉には気をつけろ!あいつはお前のケツを狙っているぞ!とかC兵長曰く「教育隊のD教官はガチらしいぞ!『男を見せろ』と言っては新兵のモノを扱かせてその飛距離を測るらしい!」といったような話の一つにすぎない。
 あくまでも正々堂々と正面突破なのである。その相手が漁色家で鳴らし、「あいつのモノは乾くヒマもないらしいぞ!」とさえ噂されるロイエンタールなのだから、これはもう艶めいたものや陰湿なものの入るすきのない笑い話にしかならない。
 笑い話、しかもごくごく健全な、酒の肴にはもってこいのネタにしかならない。

 実年齢においても、人格的にも大人であるミッターマイヤーだが、脳内は男子中学生のまま成長していないらしい。
 疾風のごとき快進撃をとばした後も、某提督から伝え聞いた「エントランスホールの中心で愛を叫ぶ」事件を思い出し、クッククックと肩を揺らし、その内腹を抱えて笑いだす始末である。

 腹を抱えて笑い、果てはテーブルをバンバンと叩き出すミッターマイヤーに、ロイエンタールのテンションはさらに深くまで落ち込んでいくのだった。

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 続きます。
 ミッタさんはごくごく健全な男子(ダンスィ)であってほしいと思う…。
 マイナー志向ですか?

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